浅羽通明の『アナーキズム』メモ〜無政府主義を考えてみる

アナーキズムの究極の目標は、ジョン・レノンの「イマジン」の世界である。

こう、説明されると大変分りやすい。

大杉栄のあの破天荒ぶりな発言、言動は大変魅力がある。

元来僕は一犯一語という原則を立てていた。それは一犯ごとに一外国語をやるという意味だ。最初の未決監の時にはエスペラントをやった。次の巣鴨ではイタリア語をやった。二度目の巣鴨ではドイツ語をちょっと齧った。こんども未決の時からドイツ語の続きをやっている。で、刑期も長いことだから、これがいい加減ものになったら、次にはロシア語をやって見よう。そして出るまでにはスペイン語もちっと齧って見たい。とまずきめた。今までの経験によると、ほぼ三ヶ月に初歩を終えて、六ヵ月目には字引なしでいい加減本が読める。一語一年ずつとしてもこれだけはやられよう。午前中は語学の時間と決める。
大杉栄『獄中記』より

なんという、のーてんき、超楽観主義、監獄に入って、のんきに外国の勉強をしてしまうなんて、大杉栄くらしかいないんではないだろうか?

彼はドモリだったらしいけど、演説すると、大衆をアジテートできた。

カリスマ性をもっていたのでしょうね。

・・・しばし休憩

そして再開、

アナーキズムの究極目標は、政府が存在しないということ、だから無政府主義

この無政府主義で成り立つ社会は、人間は本来的には善であるから、お互いに理解し合えれば、大丈夫!的なところが多分にあると思う。

って、文がおかしいが、訂正しない。

人間には、国家が必要か?という問題提起。

ジョン・レノンの言う、

想像してごらん 国境なんて存在しないと
そう思うのは難しいことじゃない
殺す理由も、死ぬ理由もない
宗教なんて存在しない
想像してごらん すべての人々が
平和のうちに暮らしていると・・・

IMAGINE
Words&Nusic by John Lenon

理想国家の実現。これは本の中身だけの共産主義がいきつく世界、そして無政府、無国家。

>>今時、アカなんて流行らないんだよ!

て言うのは簡単。

しかし、アナーキズムから零れでたものは、巷に溢れかえっている。

ジョン・レノン然り、小さな政府然り、民営化然り・・・

国が関与することな国民、県民、住民が主体となってやっていく政府、これはいずれは無政府となることを前提とした言論なのか?

まさしく、方法論的アナーキズム

と思ったけど、アナーキズム自体、方法論でしかありえない。

こんなの当たり前のこと。

無政府をつくるのに革命はいらない。

浅羽通明は、うまく、星新一の「マイ国家」を引用している。

「あなたは無政府主義者とかいうものですか」
「そうではないな。主義をふりまわして他人を動かそうとは、思っていない。第一、そんなことを言うと、政府がすぐに弾圧するにきまっている。当たり前のことだ。製薬会社の前でビタミン無用論をぶつようなもので、営業妨害ということになる。いつの時代でもどの国でも、危険人物に仕立てられ、つかまることになっている。もっとも、おれも無政府主義党を作って、合法的に政権を取ろうか考えたことはあった。しかし、この計画、どことなく変なものだ」
「お説の通りです」
星新一「マイ国家」より

社会主義国家が理想とした、人間の究極的な理想郷、無政府。これをつくるために団結して党を形成し、なぜか、一部の者が独裁し、大衆から搾取するという図式へと移り変わるは歴史を見れば分ることだ。

星新一の言葉は、痛切な批判である。

何百ページの本なんかよりも、簡潔明瞭に一番の批判になっている。